太陽ニュートリノ問題を説明できるとされているニュートリノ振動解は、非断熱解・準真空解・長基線の真空中での振動解の3つである。これらの解を検証するためには、それぞれ太陽ニュートリノのエネルギースペクトル・昼夜のニュートリノ量の変化・ニュートリノ量の季節変化を正確に観測する必要がある。 そのためには、既知のエネルギーの放射線源を使って、エネルギースケールの正確な較正・検出装置の感度の一様性の検定・長期安定性の検定をしなければならない。しかしながら、太陽ニュートリノで関心のある5〜15MeV程度の高エネルギーを直接発生できる放射線源は無く、これまではニッケルが中性子を捕獲する際に放出する9MeVのガンマ線を使っていた。その際、中性子源にはCf-252の核分裂の際放出される中性子を用いるため、同時に放出されるガンマ線がバックグランドとなり、エネルギー較正においての大きな系統誤差の要因となっていた。また、エネルギーの較正点は9MeVの1点のみであり、広いエネルギー範囲の中心付近のみしか較正することができなかった。 そこで、ニッケルの線材で中性子線源を取り囲み、中性子捕獲の効率を5倍に高めるガンマ線源を作成し、中性子源からのガンマ線の影響を小さくした。その際、中性子の振る舞いをシミュレーションすることで最適で形状を算出した。さらに、中性子源からのガンマ線と中性子捕獲で放出されるガンマ線が100〜200マイクロ秒タイミングがずれることを利用して、中性子捕獲のガンマ線のみを選択する技術も併用して、完全に中性子源からのガンマ線の影響をなくすことに成功した。これによって、エネルギーの較正精度を十分に高めることに成功した。また、ニッケル以外にもチタン・鉄といった異なるエネルギーのガンマ線を放出する線材を用いて、広いエネルギー範囲での較正を実現した。
|