研究概要 |
^<12>C(ρ,ηπ^+)^<12>C反応におけるコヒーレントπ中間子生成の微分断面積を、入射粒子の運動エネルギーが800MeVの場合に相対論的インパルス近似(RIA)に基づいて計算を行い実験データと比較検討した。 素過程としては、核子間でπ中間子を交換して、標的原子核内の核子がデルタ粒子に励起され、それが再びπ中間子と核子に戻るというダイアグラムだけを考える。Feynmannダイアグラムに従って相対論的に散乱振幅を計算するが、標的原子核中の核子に対しては相対論的平均場近似に基づいた理論(RMT)から計算される相対論的な束縛状態の波動関数を用いる。標的原子核は散乱の前後で基底状態にあるとし、生成されたπ中間子は、主にデルターホール状態を経てコヒーレントに標的原子核と相互作用するとしてポテンシャル散乱による歪曲波として扱う。入射する核子及び散乱後に出て行く核子も、同様に標的原子核の影響を受けるので、弾性散乱の相対論的な解析から得られている光学ポテンシャルによる歪曲をアイコナ-ル近似によって考慮する。 本研究による計算結果は、既に行われている非相対論的な計算の結果とほぼ一致しており、^<12>C(ρ,ηπ^+)^<12>C反応におけるコヒーレントπ中間子生成の微分断面積を定量的に与えたことになる。特に、フレームワークは非相対論でも相互作用のバ-テックスを相対論的にした計算結果とは非常に良い一致を示し、こうした反応の相対論的取り扱いが必要であることを示している。 π中間子生成の計算において確立された相対論的な方法をη中間子の生成に応用することを次に計画している。ただしπ中間子生成の場合に無視出来たのとは異なって、比較的重いρ中間子やω中間子の交換による共鳴状態の励起が重要な役割を果たす様になると予想されるので、これらを含むダイアグラムも計算する必要がある。その際共鳴状態S_<11>(1535)と中間子との結合係数(coupling constant)等ついての情報が得られるものと期待される。
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