研究概要 |
研究成果の概要は以下の通りである。 1.結晶成長 MBE法により、GaTe 基板(100)面上にバッファー層を介して閃亜鉛鉱(ZB)型のMnTe 及び高Mn 濃度のCd_<1-x>Mn_x Te (x【less than or equal】0.8)の単結晶薄膜を成長させることができた。得られた単結晶薄膜の厚みは最大で2μm程度で、X線回折測定によりNiAs相を含まない良質の単結晶であることがわかった。 2.磁気的性質 MnTe 及び高Mn 濃度Cd_<1-x>Mn_x Te の単結晶薄膜について、量子干渉磁束計(SQUID)により磁化率を測定した。その結果、磁化率の温度依存性において、MnTe では約65K 付近に反強磁性転移に対応するカスプが観測され、Cd_<1-x>Mn_x Te のMn 濃度x の減少に伴い相転移点は低温に移行した。以上の結果は、x【less than or equal】0.77の Cd_<1-x>Mn_x Te バルク試料で従来知らされている磁気相図を高濃度側に延長したものとなっている。 3.磁気光学特性 MnTe 及び高Mn 濃度 Cd_<1-x>Mn_x Teの単結晶薄膜の強磁場下の吸収及び反射スペクトルより、バンド間励起子の巨大Zeeman 分裂エネルギーを測定した。この結果と2.の磁化率測定の結果から、伝導電子とMn^<2+>のスピン間の磁気的相互作用を表すsp-d交換積分の値を見積もったところ、この値はxが0.7を越えたあたりから、xの増加と共に減少し、x=1でほぼゼロとなることが分かった。低Mn 濃度(x【less than or equal】0.7)の試料では交換積分の値は一定値(伝導帯、価電子帯に対してそれぞれNoα,Noβ)をとることは広く知られている(平均場近似)が、このことが高Mn 濃度の試料に対しては成立しないことを示しており、両者の関係を定量的に記述する枠組みの構築が必要であると考えられる。 以上の成果は、日本物理学会で発表済み又はこれから発表する予定である。
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