合成ダイヤモンドは、不純物として窒素(N)やニッケルを含み、中性子線を照射すると原子空孔(V)や格子間原子が生成される。中性子線照射後、任意の温度でアニールを行うと各種の複合欠陥(センター)が生成される。本研究課題では、センターの構造をESRを用いて調べ、光照射下でのESR信号の変化を測定し、光学センターとの相関及び光反応機構を研究した。光照射には、メタルハライドランプなどの光源とフィルターを組み合わせ照射光のエネルギーを選択した。 ダイヤモンドでは、N^0の信号変化をモニターとしてN^0とV^-間やNi^-とV^-間での電荷移動型光反応が生じる。これによれば、3.0eV以上のエネルギーの光照射でV^-の信号強度が減少し、N^0の信号強度の増加が見られた。また、2.6eV〜2.8eVのエネルギーの光照射では、その逆反応が生じた。次に、ESRセンターの一種であるA1センターは、光照射のエネルギーによりESR信号の増加、減少をコントロール可能であること、光照射後の回復反応が温度や照射光の強度などに依存すること、光反応が光学センターである3Hセンターと相関があることなどが分かった。また、ダイヤモンドにおいては、g=2の共鳴線の近傍にNの強い信号と3本の未知の信号(Xとする)が存在する。目的の信号を分離して検出するためQバンドESRを用いた。Xの信号強度は、700℃以下のアニールではアニール温度と共に増加する。信号強度の角度依存性の解析より、1本はほぼ等方的であり、他の2本は角度依存性を示す。g値は2.00240〜2.00260であり、光反応は示さなかった。Xが赤外吸収スペクトルに現れる1570cm^<-1>のアニール過程及び光照射効果とほぼ一致することから、両者が同じセンターからの信号である可能性が高いものと推察する。
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