上記研究仮題の目的である高温域の熱電能測定を行うために、測定装置の製作から始めた。装置の製作にあたっては、試料と熱起源電力信号検出のための高純度の熱電対との間の電気的接触を全温度領域で安定な状態に保つ必要があり、、この点に多いに苦労を強いられた。2つ穴のセラミックチューブに熱電対を差し込み、それをバランス良く支えるためのリン青銅板のバネを取り付けた。このユニットは、予想を上回る良い結果をもたらした。また、試料両端の温度差をつきやすくするために熱伝導の悪い、セラミックのネジを用いて試料を固定した。さらに温度の安定性を得るためにいくつかの工夫を凝らし、安定した測定を行うことができるようになった。銅の標準試料を測定し、装置の信頼性を確認した後、希土類化合物CeRu_2を選び、その熱電能を室温から800K(=527℃)の温度範囲で測定した。すでに測定済みの室温以下2Kまでの結果と滑らかにつながるが、約500Kに極小ピークが観測された。CeRu_2は、希土類化合物の異常物性に特徴的な近藤効果の特性温度が、低温の比熱などから数100Kの物質である、と推測されている。熱電能には、近藤温度に対応した温度にピーク構造が現れることが実験的に確かめられている。これが直接的にCeRu_2の熱電能に反映されているかもしれないが、さらに再現性などを調べてみないと、はっきりした結論は現段階では出せない。今後は磁場中での測定を行えるように装置の改良を試みる予定にしている。
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