研究概要 |
希土類金属間化合物PrCu_2のメタ磁性の特徴とその発現機構についての研究を行った.PrCu_2は斜方晶の結晶構造を持ち,結晶場エネルギーは9つの一重項に分裂している.そのためゼロ磁場では極低温まで磁気モーメントを持たない.磁場を加えると励起状態が混ざり合うため磁化が生じるが,磁化困難軸であるc軸に磁場を加えると約10Tでメタ磁性を示す.興味深いことに,このメタ磁性転移の後,磁化困難軸であったc軸は磁化容易軸に転換し,磁化容易軸であったa軸は磁化困難軸に転換する.このメタ磁性についてこれまで,磁化,磁気抵抗,ドハース・ファンアルフェン効果の実験により研究してきたが,本研究ではさらに超音波や熱膨張および磁歪といった弾性的な実験手段により,PrCu_2のメタ磁性を研究した. 磁気抵抗やドハースの実験からPrCu_2のメタ磁性では結晶に歪みが生じていることが予想されていたが,歪みゲージを用いた磁歪の測定により,メタ磁性では2%もの大きな歪みを伴っていることを見出した.この時,特にa軸は大きく縮み,c軸は逆に伸びることがわかった.メタ磁性における磁気異方性の転換とac軸の大きな磁歪から,PrCu_2のメタ磁性の発現機構として四重極モーメントが絡んでいることが示唆される.すなわちb軸を主軸とする四重極モーメントがメタ磁性転移の際に回転しているとして,PrCu_2のメタ磁性が理解される.
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