研究概要 |
高温超伝導など強電子相関係の特殊な電子状態はある種の構造揺らぎと強く相関することが最近の研究から明らかに成りつつある。しかし、どの様な構造揺らぎが高温超伝導の電子状態と相関しているのかはまだ解っていない。この問題の解明に最適な系はLa_<2-x>M_xCuO_4(M=Sr, Ba)である。それはこの系では銅酸素面が傾き秩序化することで様々な構造転移・揺らぎが観測され、その電子状態と強く影響し合っているためである。特に、高温正方晶(THT)⇒中間温度斜方晶(OMT)への相転移に伴いCuO_2面は異方的に変形するが(OMT揺らぎ)、この異方的なOMT揺らぎの電子状態への影響は不明である。それは斜方晶相で双晶が形成されるが、双晶を制御し単分域化した試料での測定が行われていないので、双晶境界での吸収・散乱の影響を考慮した物性測定、CuO_2面内の異方性を論議できないためである。そこで本研究では双晶を制御した結晶を得て、その物性測定を行い、真の単結晶の物性量を明らかにすると共に、双晶形成が物性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 本研究で得られた成果は次の通りである。(1)単結晶用-軸圧力装置を開発、双晶形成過程を明かにすると共に、双晶の制御と単分域化に成功した。さらに、本科学研究費で購入した高感度デジタルマルチメータによる精密な電気抵抗率と熱膨張率の同時測定によって、(2)CuO_2面内の電気抵抗率に、構造揺らぎに関連すると思われる4%程度のCuO_2面内異方性(ρ_a<ρ_b)の存在をはじめて明らかになった。また、(3)双晶境界の存在はc軸方向の抵抗率ρ_cを減少させることも明らかにした。これは双晶境界で散乱された準粒子のCuO_2面間方向へのトンネル伝導が増加する効果と理解でき、“電荷の面内閉じ込め"という高温超伝導特有の電子状態特有の現象に関連していると考えられる。
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