研究課題/領域番号 |
07740329
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物性一般(含基礎論)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
瀬戸 秀紀 広島大学, 総合科学部, 助手 (60216546)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1995年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | マイクロエマルジョン / 中性子小角散乱 / 臨界現象 / 臨界普遍性 / 臨界現象のクロスオーバー / ギンツブルグ数 |
研究概要 |
水・デカン(油)、AOT(界面活性剤)を油リッチで混合して得られるwater-in-oil droplet構造のマイクロエマルジョンは、室温では一様であるが温度上昇と共に相分離し、dropletの密度揺らぎによる臨界現象が見られる。申請者らは最近この臨界現象を中性子小角散乱を用いて調べ、臨界点の近くでは3次元Ising臨界普遍性クラスに属する振舞いをする(すなわち、感受率に対する臨界指数γ=1.24となる)一方で、臨界点から離れた組成/温度では平均場的振舞い(γ=1.00)をする、いわゆる臨界現象のクロスオーバーが見られることを見いだした。更に申請者らはこの振舞いが、1992年にBlyakovらにより提唱されたクロスオーバー理論により説明できるこを示し、実験結果よりギンツブルグ数Gi、すなわちクロスオーバー点を示す規格化温度の値を求め単純液体のものより1桁程度小さいことを示した。しかしながら、このGiの値を与える根拠については今だ明らかになっておらず、今後の課題となっている。 本研究では以上のような経緯を踏まえ、マイクロエマルジョンの臨界現象について更に詳しく調べ、クロスオーバーが見られる条件やGiの決定条件を明らかにする。ここで、相分離に伴う臨界現象を支配する相互作用の到達距離を、相関距離をξとするとr≪ξの時Ising的に、r≫ξの時平均場的に振舞うことを考えると、この相互作用の性質とGiとの関係を明らかにすることが必要であると考えられる。このため申請者らは、今年度次のようなアプローチを行った。 1)試料に静水圧を加えると、水に比べ油の圧縮率が高いため、dropletサイズ一定のままdroplet間距離を小さくすることができる。これにより系の振舞いがどのように変わるか、を調べることにより、droplet間相互作用の性質を明らかにすることができる。そこで、中性子小角散乱用高圧力セルを開発し、これまでと同様AOTマイクロエマルジョン系の臨界現象を静水圧下で調べ、クロスオーバー理論を用いて解析した。その結果、Giの値は圧力上昇と共に小さくなる、と言う結果が得られた。これは、加圧によってdroplet間距離が小さくなるため相互作用がより遠距離になったからである、と解釈できる。 2)droplet間相互作用としてはいろいろなものが知られているが、とりわけ平均場的振舞いが出ることから引力的な電気的相互作用が相分離に関してdominantであると考えられる。従って陰イオン性界面活性剤であるAOTを他の系に変えることによってGiがどのように変化するかを調べることは重要である。そこで界面活性剤BHDC、水、ベンゼンによるマイクロエマルジョンを取り上げ、温度低下による相分離と臨界現象についてこれまで同様中性子小角散乱により調べた。データは現在解析中であるが、AOTの系とは反対に斥力相互作用が構造形成に重要な役割を果たしていることが分かってきた。
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