最適化問題の一つである巡回セールスマン問題を臨界現象の研究で用いられてきた実空間繰り込み群の発想を使って非常に少ない手続きで解くことに成功した。巡回セールスマン問題はNP完全問題の一つであり厳密解を求めることは一般には難しい。また、応用としてこの問題を解くことは重要である。本研究で開発した方法を使えば例えば532都市問題では厳密解を得るのにスーパーコンピューターを用いて6時間かかる計算量のところを、パソコンで0.1秒以内で近似解を求めることができるようになった。このように短時間で近似解を得られることができるようになったことは、本研究の大きな成果であり、応用分野にとっても重要な寄与をもたらしたと言える。厳密解と比べると532都市問題で10^<-6>計算量を減少させている。最適解が知られているいくつの例を参照して、近似解の精度に関して系統的に調べた。その結果、基本的にはサイズが増大すると誤差も増大するが、都市の配置にも大きく依存することがわかった。 また最適化問題である巡回セールスマン問題について実空間繰り込みの立場から統計的性質について議論をすすめた。実空間繰り込み群が適用できるのは巡回セールスマン問題自身がスケール普遍性を持っていることを示唆する。本研究においては巡回セールスマン問題のスケール普遍性を大規模なシミュレーションで確認した。また実空間繰り込みの現象論からの説明を行った。
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