まず、parameterを持つ非可積分系の固有値反交差における非断熱遷移のsimulationを行ない、多数の反交差を経た非断熱遷移過程を調べた。このための数値計算は、δ関数的なkickを持つ非可積分系において行なった。この結果、Landau-Zenerの公式として知られている遷移確率の指数関数的振舞に加えて、反交差からの距離が有限であることの影響としてベキ的な減衰を示すことを発見した。また、ある固有状態からの遷移の様子が、外部parameterの速度によって劇的に変わる様子を調べた。この研究結果は、日本物理学会1995年秋の分科会(大阪府立大学)において、「キック系の非断熱遷移とLZ公式」の題目で発表した(講演番号27pG12)。 次に、energy交差を持つ多次元系での量子dynamicsの研究を行なった。この系は、三原子分子などの振動・回転dynamicsを考える場合によく現れる、potential曲面にconicalintersectionを持つ場合をmodel化したものである。このような系ではpotentialの非調和性により、高励起状態ではchaoticな振舞をする状態も現れるため、chaoticな振動・回転状態にある分子における非断熱過程の影響を調べるのに役立てることができる。このmodel系を使って、複数のpotential曲面を持つ場合の固有値と、量子波束によるdynamicsの数値計算を行ない、一方で古典力学的に求めた周期軌道との関係などを調べた。現在、この結果は解析の途中であるが、これらの解析が終り次第、発表する予定である。
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