研究概要 |
MIMダイオードを用いた周波数可変遠赤外光の発生では、これまでは経験的に、2波混合ではW-Ni、3波混合ではW-Coダイオードがバイアス無しで用いられてきた。本研究では、色々な金属をダイオードのベースとしてテストした結果、3波混合では、バイアス無しの状態でW-FeダイオードがW-Coダイオードと同等以上の効率を持つことがわかった。次に、これらのダイオードにバイアスを印加した場合の遠赤外光強度の変化を調べた。W-Coを3波混合で使用した場合、W-Niを2波混合で使用した場合の何れの場合もバイアスを印加すると遠赤外光強度は減少した。これは、これまでの経験的なMIMダイオードの使用が妥当であったことを示す。しかし、2波混合に関しては、W-Fe,W-Coダイオードにバイアスを印加した方が、W-Niダイオードをバイアス無しで用いるよりも数倍大きなパワーが得られた。これは、今後、微弱な遷移の測定や非線形分光を行う上で有用である。トンネル電流による遠赤外光発生のメカニズムに単純なモデルを適用し、MIMダイオードの非線形効果を計算した。しかし、そのような計算では観測されたバイアス特性を説明することはできなかった。そこで、直流に対する電流-電圧特性を測定し、その結果から非線形効果の大きさを見積った。そして、赤外光の検出、遠赤外光の放射、バイアスに対する応答というMIMダイオードの3つのメカニズムに対し簡単な等価回路を適用して解析することにより実験結果を説明できた。また、より高い周波数領域で、MIMダイオードの特性を測定するため、^<13>CO_2レーザーの発振を試みた。初め、市販の^<13>CO_2レーザー混合ガスを用いたが、発振が10分程度で止まるという現象が起きた。これは、自前の混合ガスでも同様であった。我々の炭酸ガスレーザは、loss抑制のために鏡や回折格子がレーザー管内にあるため、通常のタイプよりも真空度が悪い。これが原因として考えられ、その点を改善してテストを継続中である。
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