最近重力波検出計画が米、仏、伊などで進行しており、今世紀末には検出器が可動になることが期待されている。重力波の最も期待される放出源としては、中性子星やブラックホールからなる連星系の合体が挙げられる。このような連星が放出する重力波が地球に到達するとき、その信号の大きさは検出器のノイズに対して典型的にはたかだか十倍程度と見積もられている。それ故、重力波の検出を確信し、更にそこから情報を引き出すには、これらの現象によって生じる重力波の波形及び振幅の理論的予想が必要とされている。本研究は、このような合体する連星からの重力波の特徴を、詳細に調べることを目的としたものである。 重力波検出器では、連星の合体直前数分前に放出される周期的な重力波が主なターゲットになる。これを理論的に解析する手法としては(a)ポストニュートン近似(v/c展開)やあるいは、(b)ブラックホール周りを摂動理論(m<<M)が用いられているが、本研究においては、(b)を用いた解析を押し進め、重力波放出の反作用が連星系の進化に及ぼす影響やその結果放出される重力波についての定量的な解析を行った。 今年度の具体的な成果としては、摂動理論を拡張したことが挙げられる。これまでの摂動理論においては、質量M、自転角運動量Maのブラックホールの回りを公転する質量m(<<M)の粒子を考え、重力波の評価を行ってきた。このとき、粒子の自転角運動量についてはゼロの場合だけしか取り扱えなかった。本研究に於いては、粒子の自転の効果までを取り入れられるように拡張し、そして更に、定量的な解析を行った。そしてその結果、以下のような結果をえた。(1)粒子のスピンはそれ自体が、エネルギー運動量テンソルに寄与するため、重力波の放出率に寄与する。(2)粒子のスピンの向きとブラックホールのスピンの向きのなす角は、重力波の放出率に大きな影響を及ぼす。
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