周期的不均一性を持つ、非線形波動系におけるソリトン現象の解明を行った。線形周期系では、ブロッホ波と呼ばれる単色波を一般化した型の基本解の存在が、一般的に知られている。一方、1次元の均一非線形系において、単色波の変調が非線形シュレディンガー(NLS)方程式に支配されることが、多くの系でわかっている。本研究においては、このアイデアを周期的系に拡張することに成功した。この際、搬送波は単色波ではなく、ブロッホ波が採用された。結果的に、ブロッホ波の変調もNLS方程式に支配されることが、非線形格子、光ファイバー系において証明された。この際、一般の周期系に適用できる逓減摂動法を構築することも行った。これらの結果は、「周期系におけるソリトン現象」という新たな概念を、非線形物理学にもたらすと考えられる。さらに注目すべきは、線形波において、許されない振動数帯(ギャップ)が存在するにも関わらず、非線形系効果による振動数のシフトによって、ギャップ内に相当する振動数のソリトンが存在することも明らかになった。これはギャップソリトンと呼ばれていて、光ファイバーにおいて最近提唱された現象であるが、今回の研究ではじめて非線形格子においても存在し得ることが明らかになった。特に、2原子格子において、数値シュミレーションを行い、理論から予想されるギャップソリトンの存在が確認された。今後は、流体系プラズマ系にこのアイデアを応用したい。
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