研究概要 |
岩石すべり実験の結果の基づいた摩擦構成則であるすべり速度/状態依存摩擦法則を利用して以下の数値シミュレイションを行った.(1)実験室の複合試料中の断層で発生する低速伝播すべり.不安定すべりを起こしやすい花崗岩と安定すべりを起こしやすい大理石を組み合わせた複合試料中の断層では低速伝播すべりが発生する.花崗岩断層中ではすべり速度弱化,大理石断層中ではすべり速度強化という摩擦特性を仮定して数値シミュレイションを行うと低速伝播すべりの発生が再現できる.(2)沈み込み域のプレート境界でのすべり過程.摩擦特性の温度依存性等を考慮して,摩擦パラメターの適当な深さ分布を与えてシミュレイションを行った.プレート境界で不安定すべりが発生するのに必要な断層長さが理論的に導かれる.プレート境界の地震発生域が,この臨界断層長よりも十分に長いときにはサイスミックカップリング係数は1に近い値をとり,これが臨界断層長とほぼ等しいときには,slow地震やsilent地震が発生してサイスミックカップリング係数は0に近づく.摩擦パラメターの深さ分布が不均一であるときには,中・小規模の地震性及び非地震性のすべりが発生し,摩擦パラメターが均一であるときに比べてサイスミックカップリング係数が小さくなる傾向がある.さらに,前駆的非地震性すべり,余効すべり,silent地震の発生によって,地表で観測されるべき地殻変動の計算を行い,それらが検出できる規模で発生する可能性が高いことを示した.
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