はじめに:地殻比抵抗研究グループのこれまでの研究から、一測線のみのデータではあるものの、(1)四国中央部の外帯(三波川帯・四万十帯)では上部地殻内に10km前後の厚さをもつ低比抵抗領域が共通して存在、(2)この領域が同地方下の無地震領域と対応するなどの可能性が示されている。 1.目的:本研究の目的は、四国地方東部地域において電気比抵抗構造調査を行い、「三波川帯の上部地殻内の低比抵抗領域」の存在形態ならびにその成因を解明することである。 2.観測:徳島県の阿波町から山川町・神山町を経て木頭村に至る測線(四国東部三波川帯で4地点、参照点として南側の地質帯の秩父帯で2地点、合計6地点)において広帯域(400-0.0005Hz)のMT調査を行った。 3.一次元構造解析の結果:(1)全観測点に共通して地殻深部まで高々100Ωm程度の比較的低い比抵抗値を示す構造となっている。(2)上部地殻内には、全観測点に共通して、厚さ5km程度の低比抵抗領域(2-20Ωm)が存在する。(3)その低比抵抗領域の上面は、三波川帯では500m程度、秩父帯では4km程度と、地質帯による差異がみられる。 4.まとめ:本研究(四国地方東部)並びに既存のデータ(四国地方中央部)を総合すると、四国地方の三波川帯の上部地殻内に低比抵抗領域が普遍的に存在することが明らかになった(内帯:地殻は高比抵抗と対照的)。一つの解釈として、三波川帯が、海洋性物質(低比抵抗物質)の"底付け"により上昇したと考えるとその下には低比抵抗領域が存在することが想定される。さらに、同様の低比抵抗領域は参照点とした秩父帯や、四万十帯でもみられ、四国地方外帯には、上部地殻内に低比抵抗領域が普遍的に存在する可能性がかなり高いことが示された。今後は、これら他の地質構造帯の比抵抗構造を含めての詳細な調査により、四国地方の地殻の形成メカニズムが明らかになるものと期待される。 5.本研究の成果は、96年3月末の地球惑星科学関連学会において報告させて頂きます。
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