東部太平洋では熱帯収束帯が太陽放射の最も大きい赤道ではなく、北半球に形成されることが古くから知られている。大気海洋間の相互作用がこの北半球収束帯の維持に重要である。最近、Xie and Philander(1994;以下XPとする)は外部条件が南北対称の下で、大気海洋結合系が南北非対称になりうることを示した。本研究では、XPの解がなぜ多重性を持つか、また太陽放射の季節変化がどのようにXPの多重解に影響するかについて調べた。 XPの大気海洋結合モデルの線形安定性を調べたところ、以下のような不安定モードが存在していることが分かった。北半球に正、南半球に負の海面水温偏差があると、赤道を超えて南半球から北半球に吹き込む海上風が生じる。北半球では、この南風がコリオリカの影響で東向き成分を持つようになり、西向きの平均貿易風を弱める。そのため、北半球で海面蒸発が押さえられ、海面水温の正の偏差が強化されることになる。この線形「風速・蒸発・海面水温フィードバック」モードが、非線形XPモデルから検出された不安定モードと水平構造や成長率の点でよく一致していることから、XPモデルの解の多重性は南北対称解の不安定性によるものであると結論付けられた。 太陽放射が季節変化をする場合、多時間スケール解析を行い、モデルの年平均場の時間発展を季節変化から分離することができた。季節強制によって平均気候の安定性が大きく変わる。定常強制の場合に比べて、南北非対称性を維持するためにはより強い大気海洋間の結合が必要である。 本研究の成果は2編の論文にまとめられており、その内1編は印刷中で、もう1編は投稿中である。
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