研究概要 |
1.草原群落-大気間のCO_2・H_2Oの交換過程に関する数値計算モデルの開発 植物の光合成・呼吸・気孔開閉などの生理作用を考慮に入れた,草原群落-大気の間のCO_2・H_2O交換を表現する多層キャノピ-モデルを開発した.このモデルは,草原群落を鉛直方向に数十層に分け,群落内外の放射量・風速・気温・水蒸気圧・CO_2濃度などの大気環境要因の鉛直分布を計算すると共に,群落内の各高さにおける葉と大気CO_2・H_2O交換を算出するものであり,特に光合成・気孔応答の異なるC_3植物とC_4植物を表現することができる. 2.野外観測データを用いたモデルの検証 モデル開発に先立ち,1993・1994年の植物生育期間に,筑波大学水理実験センターの草原圃場において,植物種別の地上部現存量と群落上CO_2・H_2O交換量の季節変化の観測が既に行われている.本研究では,開発された多層モデルを用い,観測日におけるCO_2・H_2O交換量の計算を行った.ここで.群落全体の物質交換に対するC_3植物とC_4植物の寄与率を,観測された葉面積指数のC_3・C_4混成群落におけるCO_2・H_2O交換量をモデルはよく再現した. 3.モデルを用いた1993・1994年のC_3・C_4混成草原の応答の解析 多層モデルを用いて,冷夏の1993年と暑夏の1994年のCO_2・H_2O交換における,C_3・C_4植物の違いに注目した数値シミュレーションを行った.その結果,1994年の夏にいC_3植物群落のCO_2交換量は顕著に低く抑えられたことがモデルから予想された.この原因は,1994年の高温が,暗呼吸と土壌からのCO_2放出速度を増大させたため,またC_3植物では特に光呼吸が促進されたためと解釈される.
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