研究概要 |
本研究では,オゾン量に大きな影響を与える成層圏での窒素酸化物の高度分布が夜間どのように変化していくかを観測により明らかにすることを目的として,開発中のオゾン・二酸化窒素・三酸化窒素・エアロゾルを同時に測定するための多色放射計を完成させ地上からの試験観測を行うことを目標とした.観測装置は,星追尾系,光学系,電気信号系,データ収録系からなるが,各ブロックを一応完成することができた.また,気球に搭載して観測する際の気密箱も製作した.製作した光学系・電気信号系の性能が目的のために十分であることを確認するため,1次元光化学モデルを使用したシミュレーションを行い,星を光源としても最低限必要な信号雑音比を得られることもわかった.しかし,成層圏を想定した低温環境試験を行ったところ,星追尾系のモーターの動作が不安定になることがわかった.モーターのドライブ方式を,アナログ制御からエンコーダーによるフィードバックを用いたディジタル制御のものに変えると低温での動作もかなり改善されることがわかり,方式を変更することにしたが,星追尾系の電気回路を全面的に作り直す必要が生じ,本年度中に改修を完成させることはできなかった.また地上観測では,成層圏では問題とならない水蒸気の吸収線が大きな干渉を起こす危険性が指摘されていたが,最新の分光データベースを使用して,成層圏での観測に最適な波長域ではやはり水蒸気干渉により測定の信頼性が大きく低下することを確認した.そのデータベースを使用し,地上観測用に最適な波長域を選定して,地上観測用に光学系の変更を行った.
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