文部省宇宙科学研究所により1998年に打ち上げ予定の我が国初の火星探査衛星Planet-B搭載用の低周波波動観測装置(LFA)のための、以下のソフトウェア開発を行った。 1.LFA搭載のDSP上で、FFTおよびWavelet変換を行うためのソフトウェアをC言語で開発し、以前に当研究室で設計、制作されたLFA試作機上のDSPに搭載し、パソコンによるDSPコントロールを行ってその動作を確認した。今後、これらのソフトウェアをアセンブリ言語などを利用して改良、効率化することにより、LFA上で複雑な時間-周波数解析を行い、スペクトルや偏波などの情報を得て、それに応じて観測モードを自動的に切り替えるなどの自律処理が可能となる。 2.火星などの超長距離通信における限られた伝送容量(例えば地球-火星間は通常2kbps)で波動観測データを効率的に地上に送るための手段として、ニューラルネットワークによる自動波動スペクトル確認システムを提案し、UNIX上でC言語によりコーディングを行いその動作を認識した。実際に科学衛星GEOTAILにより地球磁気圏内で観測された波動(コーラスエミッション:数秒の間に周波数が200〜600Hzに変化する特徴を持つ)を本システムに入力して認識テストを行ったところ、約80%以上の認識率が得られた。今後、本システムをLFA搭載のCPUあるいはDSP用にコーディングすれば、火星周辺で観測されるであろう波動の特徴的なスペクトルパターンのみを抽出することが可能となり、地球に転送されるべきデータ量の削減につながるものと期待される。 これらのソフトウェア開発は、Planet-BのLFAのみならず、将来の惑星探査衛星にも搭載されるであろう波動観測装置を、高度に自律して複雑な信号処理を行う「インテリジェントな」ものにするための基礎として非常に有用であると考えられる。
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