研究概要 |
IタイプとSタイプの花崗岩が,下部地殻条件で混在する岩体(日高変成帯新冠川上流地域)のより詳細な地質調査を行なった.その結果,IタイプとSタイプの花崗岩体が混在する場所を見いだした.またこの地点において両者の境界部から細かくサンプリングを行った.これらのサンプルを用いて室内で顕微鏡による記載,蛍光X線による全岩化学組成の分析,EPMAによる鉱物の組成の分析を行った.岩石薄片の鏡下の観察では特に不透明鉱物の同定に,本研究費で購入したユニバーサル照明を用いた反射光での観察が有効であった. その結果,次のようなことが明らかになった. (1)両者は貫入関係ではなくマグマ溜まり内で混在していたものと思われる. (2)両者とも磁鉄鉱は含まずイルメナイト系列であった. (3)典型的なIタイプ花崗岩はホルンブレンドを,典型的なSタイプはざくろ石や菫青石を伴っているが,境界部付近では苦鉄質鉱物は黒雲母・斜方輝石・カミングトン閃石だけであった. (4)全岩化学組成では両者の相互関係は明瞭ではないようであった. (5)両者の境界部のサンプルでは斜方輝石は両者の中間的な化学組成を持っているようであった. (6)Iタイプは輝石角閃石の部分溶融により形成され,その溶融比率は20%程度と思われる. (7)Sタイプは砂泥質グラニュライトの部分溶融により形成され,溶融比率は60〜90%程度と思われる. 上記にはまだあいまいな点があるので,今後さらに厳密に検討を続ける.またRb-Sr同位体比の測定や,高温高圧実験の作業を他大学の施設で行ったが,次の様なことが未解決に終わった.次の機会に再挑戦したい. (1)サンプルのRb含有量が7〜20ppm程度と極めて低かったために,Rb-Sr全岩年代を正確に求めることが出来なかった. (2)流体相の制御が難しく,高温高圧実験は困難であった.
|