研究概要 |
美濃帯のペルム紀海洋性岩石ナップの構造運動を解明するために,岐阜県から三重県にかけてナップ下底部のマイロナイト帯を追跡し,露頭状況の良かった岐阜県関ヶ原,三重県藤原,滋賀県山東,米原,多賀,永源寺,土山において詳しい野外観測とサンプリングを行った.マイロナイトは,研磨片・薄片を作成し、微細変形構造の記載を行った.また,ナップの構造的下位の黒色泥岩から,放散虫化石を抽出した. 岐阜県美山町から滋賀県土山にかけての美濃帯ペルム紀海洋性岩石ナップの下底部では,玄武岩類が強く剪断を受けており,流動構造を含む変形構造が顕著であり,下位の地層と境界部で複雑に混じりあっている.剪断帯は数メートルから10m以下であるが,滋賀県永願寺では,衝上断層直上だけでなく,その上方にも同系統の剪断帯が繰り返し発達している. 鏡下観察によると,剪断部の玄武岩類は,源岩の鉱物の殆どが脆性的に破壊され,明瞭な面構造が発達し,粗粒圧砕部と細粒圧砕部による流動構造が認められる.初生的に含まれいた石灰岩・チャート岩塊がポ-フィロクラストとして残存している.shear band foliation,,asymmetric pressure shadow,displaced brken grainなどの非対称な微細変形構造から,剪断のステージ区分とセンスの決定を試みた.その結果,三重県藤原では2つの剪断ステージを識別することができた.どの地域の微細変形構造も,すべて南フェルゲンツを示していることから,衝上運動は大局的には北から南に向かって起こったと考えられる. ナップの構造的下位の地層の黒色泥岩からジェラ紀放散虫化石を得たが,最も新しいものは三重県藤原のジュラ紀中世後期の放散虫化石であった.ナップに貫入する火成岩の時代と併せると,この衝上運動はジュラ紀新世から白亜紀中世に起こったと考えられる.
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