世界で数少ない超高圧変成帯として知られている中国山東半島地域で共同研究者とともに地質調査を行ってきた。その主たる目的は、広域的な構造を究明することと、比重の高い岩石(エクロジャイト)と取り囲んでいる岩石との関係を明らかにすることの二通りであった。青島市近郊の露出状況が優れた地域では、特に精密なマッピングや標本採取を行った。その結果の一部は論文にまとめ国際誌に投稿したが、その最も重要な結論は次の通りである。 i)エクロジャイトが露出する地域を中心として広域的に岩石の構造を調べ、面構造はばらつきがあるものの平均的には北東-南西走向を示し、鉱物線構造は北西-南東であり、しかもそれに伴う剪断は概ね北西ずれであることが判った。 ii)コース石を含むエクロジャイトや局所的に花崗岩組織を残す変麻岩とで構成されている100m^2規模の複合岩体を見つけ、野外で観察した初生関係や全岩組成の結果によって、この複合岩体は一つのマグマからできた一連の火成岩類であることが判った。さらに、変成鉱物やそれらの微細組織を観察し、複合岩体として超高圧(25kbar以上)変成作用を受け、その後再び地表に上昇したと推定される。 また、本研究では、ヨーロッパのアルプス山脈以外では、初めて超高圧花崗岩類を報告した。このような岩類の存在は、花崗岩は密度が低いにも関わらずマントル上部に当たる深さまで潜り込むことが可能であることを証明できるといった点で意義がある。この現象の力学を説明する試みについては、月刊地球に発表した。こうした花崗岩類はコース石を含むエクロジャイトと一緒に潜り込み、その複合体の総合密度は排除されるマントルに比べて小さいので、浮力は正となり上昇の最初の段階で重要な力であった可能性がある。
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