研究概要 |
実験出発物質として金属鉄と珪酸塩(天然ブロンザイト結晶と石英ガラス)との粉末焼結体を作成した.試薬はFe/Si,Mg/Si原子比が1になるように調合した.この焼結体は液滴急冷直後の未変成のコンドリュールとして想定されたものである.これと,ガス源となる硫黄結晶を,石英ガラス管内に真空封入し,電気炉で加熱した.試料加熱温度は約900℃に保持した.硫黄結晶は約360℃に保持し,加熱溶融させた.このことによって,硫黄に富むガスが石英管内に生成した.実験は時間を変えて数回行った.その結果,出発物質内部の鉄は硫黄に富むガスと反応することにより,硫化鉄を生成させた.反応初期(短時間)には,鉄が出発物質表面にまで拡散してきて,硫化鉄の反応縁を生成した.しかし,反応が進む(長時間)と,硫黄に富むガスが内部に拡散し,内部に残された金属鉄を硫化させた. 実際に観察される硫化鉄のコンドリュールリムをもつコンドリュール内部には金属鉄や硫化鉄を伴っていない.このことから硫黄に富むガスとの反応で,その成因を説明するためには金属鉄がコンドリュール表面付近に濃集していたという条件を与える必要があることがわかった.この成果の一部は,平成7年の地球惑星関連学会合同大会で発表した. 硫黄に富むガスとの反応速度論的問題が残っている.今後この問題を,温度,時間などの条件を変化させて求める必要がある. コンドリュール集積後にコンドリュールリムが形成する可能性も考察する必要も残っている.今後,本奨励研究費で設置した電気炉を利用して,さらに実験的にコンドリュールリムの成因の実験的研究を進めていく予定である.また,実際に見られる非平衡コンドライト隕石の組織,化学組成などとも組み合わせて,コンドリュール集積前後の過程を解明していく必要もある.
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