山形県鶴岡市の日本海岸(38°48'E、139°44'E)を観測点とし、以下の2つの研究を並行して行った。 A)1992年に得られている大気浮遊粒子および降下粒子中ポロニウム-210、鉛-210放射能のデータ解析 B)同観測点における浮遊粒子中ポロニウム-210、鉛-210放射能の粒径分画捕集および分析 A)により、大気浮遊粒子中のポロニウム-210/鉛-210放射能比は季節を問わず降下粒子中放射能比よりも大きいこと、浮遊粒子、降下粒子ともに、春季の放射能比が他の時季の値よりも大きくなることがわかった。これらの原因として、粒状物の供給源が浮遊粒子-降下粒子間、あるいは季節間によって変化すること、降下物中に含まれる粒子よりも大気中に浮遊している粒子の方が気圏における滞留時間が長いことなどを考察し公表した。B)は、上記放射能比が粒径(大気粒状物の起源と密接な関係にある)によってどのように変化するのかを調べるために行った実験である。1995年7月から現在まで、月に一度、大気浮遊粒子を、φ0.7μm以下、φ0.7μm〜1.6μm、φ1.6μm〜5.4μm、φ5.4μm〜10.9μm、φ10.9μm以上の5段階に分画捕集し、ポロニウム-210、鉛-210放射能を測定している。現在のところ、1)浮遊粒子中ポロニウム-210、鉛-210放射能は小粒子画分に卓越して存在(全放射能の73%がφ0.7μm以下の画分)していること、2)7月から1月までの粒径分布に季節変動は見られないこと、3)放射能比の極大値はφ5.4μm〜10.9μm画分にあらわれること等がわかっている。このことから、大気中ポロニウム-210、鉛-210は主として大気中ラドン-222起源のサブミクロンエアロゾルではあるものの、比較的大きな放射能比を持つ粒子は直径数ミクロンのエアロゾル、例えば鉱物起源粒子、からの寄与が大きいと予測される。
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