研究概要 |
マントル環境下における固相間および固相- 液相間の主要元素および希土類元素の元素分配に対する酸素雰囲気の影響を調べるために、出発物質の合成、高温高圧実験、回収試料の分析を行った。出発試料は天然試料(ハワイ島キラウエア玄武岩)に0.3から0.5wt%の微量元素・希土類元素を加えたものを作成した。高温高圧実験は3から7GPaの圧力範囲で固相と液相が共存する温度条件下で行い、回収試料の組成分析にはEPMAを用いた。実験の酸素雰囲気は、Graphite、Rhenium、Au-Palladium+水、の3種類のカプセル構成で調整した。この順番で、より酸化的な酸素雰囲気が実現していると考えられる。ただし同時に変化しうる水素雰囲気の影響については考慮していない。当初予定していた希土類元素を加えて合成したマントル鉱物を種結晶として用いて行う平衡到達の確認実験はまだ行っていない。 実験結果からは現時点で次の事柄が明らかとなった。同一温度圧力条件下の実験でも酸素雰囲気が異なると主要元素の元素分配に変化が生じる。これは酸素雰囲気によって価数を変化させるFeなどの元素だけでなく、本来2価の元素であるCa, Mgや1価のNaに対しても有意に観察される。酸化的な雰囲気下ではGarnet中のCa量やCpx中のNa量が顕著に増加し、従って共存する液組成ではこれらの元素に乏しくなる傾向が現れる。これは、Garnet中のAndradite成分とCpx中のAcmite成分が安定化したためと解釈できる。ただしこの現象の圧力の依存性はもともとこれらの元素のGarnetやCpxへの入り方に圧力依存性が強いために明確ではない。微量元素・希土類元素の分配についても同様に酸素雰囲気の影響が見られ、酸化的雰囲気下の方がよりgarnetにこれらの元素が入りやすいという一般的傾向があるがその大きさは一意的ではない。
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