研究課題/領域番号 |
07740448
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 久史 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (60250833)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1995年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 放射オージェ過程 / 化学効果 / 蛍光X線スペクトル / サテライト / DV-Xα法 |
研究概要 |
放射オージェ(RA)過程は、1光子放出を同時に伴う2電子遷移による内殻空孔の緩和過程であり、特性X線の低エネルギー側にサテライトバンドを与える。このバンドスペクトルは硬X線領域にありながら、実験の難しい軟X線吸収スペクトルと類似の情報を含んでおり、凝縮系の電子状態の有用なプローブになる可能性をもっている。しかし、これまでの研究例は少なく、詳細は未だ不明な点が多い。 RAスペクトルの物性研究への応用を究極の目的として、本年度はまず、強度の弱いRAスペクトルを高分解能で測定する分光器の開発からはじめた。具体的には、手持ちのX線ラマン散乱用分光器をベースに、真空パス接続部と検出器設置部を改造し、1次元検出器並びにヨハンソン型湾曲結晶を組み込んだ。湾曲結晶は試料に応じて何種類か準備したが、その中には本経費で購入したSiO_2結晶も含まれる。この分光器によって数日程度の清算で数eVの分解能のRAスペクトル測定が可能になった。 開発した分光器を使って、いくつかのKとCa化合物のRAスペクトルを測定したところ、化学的環境の違いに応じて形状が変化する複雑な構造が観測された。こうした化学効果は、電子状態研究のプローブとしてのRAスペクトルの可能性をあらためて確認させるものである。得られたRAスペクトルの解釈にあたってDV-Xα法を導入したところ、RAスペクトルの構造とその化学効果を、化学的常識と矛盾させずに、試料の電子構造と結びつける事ができた。詳細はすでに雑誌論文として発表している。 本研究で用いた方法:RAスペクトルの高分解能測定とDV-Xα法による解析は、他の元素の化合物についても有効と期待される。現在、Ti、V、Cr、Mnの化合物について同様のやり方を系統的に行っているところである。今後もこうした基礎データを蓄積する事で、RAスペクトルの実用化に寄与したいと考えている。
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