研究概要 |
平成7年度に、クラスター負イオンの光電子分光装置を製作し、以下に挙げる研究成果を得た。 1.二酸化炭素のクラスター負イオンの化学反応 (CO_2)_N^-をCH_3Iと気相で反応させた結果、[(CO_2) _nCH_3I] ^-(n=1-3,n≧7)を主生成物として検出した。光電子分光法により主生成物の電子構造を調べた結果、n=1-3,n≧7とでは全く異なる電子構造を持つことがわかった。すなわち、n=1-3では分子負イオン[CH_3CO_2I]^-をイオン芯として持つのに対し、n≧7ではCO_2^-をイオン芯として持つことが明らかになった。[CH_3CO_2I]^-はCO_2^-とCH_3I との求核置換反応の中間体に相当し、余剰電子は酢酸ラジカルとヨウ素原子によって共有された電荷共鳴錯体を形成している。これに対してn≧7ではCH_3Iが(CO_2) _n^-クラスター負イオン表面に吸着した構造を持つものと推察される。 2.異分子添加による二酸化炭素クラスター負イオン電子構造異性体の生成 (CO_2)_N^-に水やアルコールなどの極性分子を付着し、二成分クラスター[CO_2) _nX]^-(X=H_2O,CH_3OH, C_2H_5OH) を生成した。これらの電子束縛状態を光電子分光法によって調べた結果、n=1-6でCO_2^-をイオン芯とした成分が観測された。さらに、n=2-4においてはC_2O_4^-をイオン芯とする電子構造異性体が共存し、添加した極性分子の種類によって異性体の生成比が異なることが明らかになった。、これらの実験結果は、電子構造異性体の相対的な安定性が極性分子とイオン芯との相互作用によって支配されていることを示している。
|