本研究ではまず、スペクトラムアナライザを利用した偏光解消動的光散乱装置を開発を行った。このシステムの有効性を確認するために、高粘性液体と同様に配向緩和時間のスローイングダウンが生じる液晶に相転移する液体の一つである5CBの偏光解消動的光散乱の実験をおこなった。5CBではRayleigh Dipがはっきりと観測され、装置の有効性が証明された。配向緩和時間だけでなく、並進配向結合係数の温度依存性を測定した。この結果協同運動の結果として並進配向結合係数が相転移点近傍で減少することを見いだした。また、棒状高分子であるPBLG溶液の偏光、偏光解消散乱のスペクトル線幅に温度依存性を見いだした。また、高粘性液体試料としてリン酸トリオルトトリルのスペクトル測定を試みた粘性が非常に大きいため、配向緩和時間は非常に遅く本測定装置では、線幅の正確な値は測定できなかった。しかしながら、配向モードピークよりも小さなエネルギー密度しか持たないブリュアン散乱ピークを確認した。このことは粘性の低い系では本測定装置で配向緩和が測定可能であることを意味してる。また、時間域での自己相関関数の測定装置の作成に着手したが、既設のHe-Neレーザーの周波数線幅が大きいため満足な結果を得ることができなかった。 今後、レーザー線幅がせまく、パワーの大きいレーザーを導入すれば更なる発展が期待される。
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