まず本年度は昨年までに開発した光サンプリングポンプープローブ分光システムの性能向上を目指すとともに、チャープパルスサンプリング法の開発に取り組んだ。チャープパルスを生成する方法として1枚の回折格子を用いる方法と光ファイバー中で起こる自己位相変調効果を利用する方法とを実験的に比較した。その結果、双方で100ピコ秒程度のパルスが得られたが、システムをコンパクトにするため後者を選択した。高価なストリーク管の代用としてオシロスコープブラウン管の改造を考えていたが、ブラウン管だけを購入することが困難でありこれの使用を断念した。チャープパルスを使って周波数スペクトルを取得する代わる別の光サンプリング法の性能向上案として測定感度の向上を試みた。現状ではロックインアンプを使った通常のポンプープローブ法に比べて1桁以上感度が悪い。これを改善するため2台のフェムト秒レーザーをパルス幅程度のジッター内で同期させ他方に対しもう一方のレーザーの繰り返し周期に変調をかけ位相敏感検波を行う方法に切り替えた。現在2台のフェムト秒レーザーをパルス幅程度のジッター内で同期させる試験が終了したところである。その結果約2ピコ秒以内で同期が可能であることが分かった。その他現状の光サンプリング法を用いた溶媒和過程に関して裏面2の研究、量子井戸構造半導体のスピン緩和に関して裏面1の研究を、さらにその温度依存性を測定し緩和メカニズムを特定した研究成果をPhysical Review Lettersに投稿できた。
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