イミダゾピラジン誘導体としてセレンテラジンアナログを選び、その発光機構と発光能の制御を行うために6位のフェニル基上に種々の置換基を導入したセレンラジンアナログとアダマンチルメチル基を有するアナログの化学発光特性を調べた。6-フェニル体の化学発光では、一重項励起分子生成効率が置換基の影響を受けないが、発光波長は大きく影響を受けることがわかった。特にジメチルアミノ置換体のジグリム中での化学発光は500nmまで長波長シフトした。この理由は、反応で生成する中性のセレンテラミドアナログの一重項励起状態が分子内電荷移動性を有するためであることが明らかになった。また、2位と8位のそれぞれにアダマンチルメチル基を有するアナログの化学発光では、非極性のアダマンチル基が発光反応で生成するアニオン性励起分子の安定性に影響し、プロトン化速度の変化による発光波長の変化が観測された。 2-フェニルイミダゾピラジン誘導体は長波長蛍光を示す。この特性を生かした発光物質を開発するために、2-フェニルイミダゾピラジノンの酸化的二量化生成物を合成した。この化合物はたいへん不安定であるが発光能を残し、しかもその発光波長は620nmまで長波長シフトしている。発光反応では二量体の一方のイミダゾピラジン環が酸素と反応して励起分子を生成し、この励起分子にはもう一方のイミダゾピラジン環が残っているために長波長発光を示したことがわかった。この特性を積極的に利用するために、ベンゼンに2つのイミダゾピラジン骨格を置換した誘導体を合成した。ジメチルスルホキシド中、塩基存在下で化学発光を行うと橙色発光が確認され、長波長発光を実現することに成功した。可視部での発光は生体内の活性酸素の定量への応用が期待されるため、さらに発光量子収率などの発光特性の確立を進めている。
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