研究概要 |
1.3位カルバモイル基の配向がニコチンアミド環の酸化還元反応に及ぼす効果の研究および不斉反応への応用を目的として,軸不斉そしてC2対称軸を持つ2-2′ビピリジン型アナローグの合成を行ってきた。残念ながら2-クロロニコチン酸誘導体のカップリング反応が当初成功しなかった。しかし立体障害の少ない3-CN誘導体を用いての反応でカップリング生成物を得ることができ,以後の合成を進めている段階である。今後これを用いて3位カルバモイル基の立体電子効果の検討を進める。 2.上記の目的で2位に導入した置換基がアナローグの反応性・立体選択性にどの様な影響を与えているか検討するために,2-アリールアナローグを合成し反応性を検討した。 1)その酸化型のN-CH_3-3-CONMe_2-2-Arylpyridiniumは,1,4-dihydropyridineを通常選択的に与えるジチオナイト/水で還元できなかった。一方,NaBH_4還元(in MeOH)では1,6還元体が96%以上得られ,従来の代表的アナローグの還元位置選択性と異なることもわかった。この位置選択性への2-アリールの置換基の効果はほとんどなく,このアナローグのその他の構造特性が原因と考えられた。これを検討するため,種々のアナローグの同条件下における還元位置選択性を調べ,MOPAC/PM3により計算された部分電荷,LUMO密度,生成物の安定性等と比較した。NaBH_4還元では第一にN位の正電荷によるBH_4-の引きつけが重要であるとされているが,今回の結果から3位カルバモイル基の立体も位置選択性に大きく寄与していると考えられた。また,その他の寄与も計算との対比で考察できた。 2)NaBH_4還元反応速度測定(ini-PrOH)は,反応が高速(10^5_S-^1M-^1程度)すぎたためストップドフロー法を適用した。電子求引性置換基の2-アリールアナローグの方が速く還元され(ρ=0.8),N位の電荷の効果が示唆された。
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