原子価欠損型反応中間体としてビラジカルを用いた。その前駆物質は、ベンゾフェノン(BP)とジフェニルメタン(DPM)が12個のメチレン鎖でつながった化合物である。この物質はレーザー光照射時にBPがDPMのベンジル位の水素原子を引き抜いてBPケチルラジカル(BPK)とDPMラジカルからなるビラジガルを生成する。一方、三重項増感剤としてはナフタレン、クリセン、トリフェニレン、2-アセトナフトン等三重項エネルギーレベルの異なるものを使用した。これらをベンゼンを溶媒として適当な濃度で一緒に混ぜ、レーザー光で両物質を光励起し、三重項増感剤から二重項ラジカルBPKへのエネルギー移動を、BPKの光励起状態ラジカルの波長600nmの発光寿命が、三重項増感剤の寿命(数マイクロ秒)近くまで長くなっていることで確認した。増感剤がないと光励起状態BPKの寿命は数ナノ秒と先の1000分の1である。これで目的の新しい反応状態の光励起状態を長い時間(数マイクロ秒)作り出すことができた。この光励起状態の寿命は三重項増感剤を変えることで制御できた。この光励起状態はその基底状態と同様、主にもう一つのラジカルであるDPMラジカルと再結合反応で環化物を有無と考えられる。そこで、次にその収量が強磁場存在下と三重項増感剤の産むで如何に変化するかを検討した。磁場存在下においてはこのビラジカルは基底状態で、その反応性に影響を受けるため、BPKの増感剤によって長くなった発光寿命が、磁場強度増加と共に更に長くなることが確認できた。このことはその反応性が磁場摂動によって変わっていることを意味している。環化物収量に対するこれらの効果は現在進行中である。
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