芳香族ニトロ化合物にDBUの存在下で、イソニトリルを反応させると縮環型ピロールが生じることを報告しているが、ヘテロ環化合物に同様の方法を適用したところ、予想に反してピロールではなくピリミジン-N-オキシドが生じる場合があることがわかった。例えば、4-ニトロベンゾチアジアゾールを基質として用いたところ、対応するピロールが生成したが、5-ニトロベンゾチアジアゾールを用いた場合には対応する縮環型ピリミジン-N-オキシドが生じた。このようにニトロ基の位置の違いだけで生成物が異なる生成物が得られる反応はきわめて珍しいものである。この反応の反応機構に関してはニトロ化合物にイソニトリルのアニオンがマイケル付加してできる中間体がニトロ基のアンビデント性により2つの共鳴構造をとることに起因していることを明らかにした。すなわち、炭素原子上のアニオンがイソニトリル部分と反応すればピロールとなり、酸素原子上のアニオンが反応すればピリミジン-N-オキシドとなる。従ってニトロ基が立体的な要請から芳香環と共平面上に位置することができない基質の場合にはこの共鳴が不可能であり、アニオンは炭素原子上に局在化しているためにピロールが生じると考えられる。このほか、ニトロベンゾチアジアゾールのセレン誘導体であるニトロベンゾセレナジアゾールや、5-ニトロキノリン及び6-ニトロキノキサリン等の反応では対応するピリミジン-N-オキシドが得られた。
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