研究概要 |
亜硝酸還元酵素のモデルとして銅2価錯体([Cu(H_2O)(tpa)]^<2+>:tpa=トリス(2-ピリジルメチル)アミン(三脚型四座配位子))およびtpa配位子の3つのピリジン環の6位をメチル基で置換した3種の錯体([Cu(H_2O)(Me_1tpa)]^<2+>、[Cu(H_2O)(Me_2tpa)]^<2+>、[Cu(H_2O)(Me_3tpa)]^<2+>)を用いた亜硝酸イオン還元反応機構の解明を目的として以下の点について明らかにした。 1 亜硝酸イオンの[Cu(H_2O)(tpa)]^<2+>との付加体として結合異性体であるニトリト錯体([Cu^<II>-ONO^-])およびニトロ錯体([Cu^<II>-NO_<22>])の構造について明らかにし、これらの結合異性体は溶液中で平衡混合物として存在している。 2 Me_1tpa、 Me_2tpaおよびMe_3tpa錯体については亜硝酸イオンの付加体はニトリト錯体のみが存在していることが錯体の単離および溶液、固体の赤外吸収スペクトルにより明らかとなった。 3 銅の2価から1価への還元に伴うニトリト-ニトロ平衡反応の変化について溶液電界赤外吸収スペクトルにより検討し、Me_1tpa錯体ではニトリト錯体からニトロ錯体への異性化は観察されなかった。また、亜硝酸イオンの還元能としてはMe_1tpa錯体は低いことが還元反応により明らかとなった。従って、亜硝酸イオンの銅イオンへの配位モードと還元反応に何らかの関わりがあることが示唆された。 4 Me_1tpa、 Me_2tpaおよびMe_3tpa錯体の構造を明らかにし、電気化学的性質との関連について検討した。その結果,ピリジン環の6位をメチル基の数に伴い構造および酸化還元電位が変化することが明らかとなった。
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