研究概要 |
1.分子集合体において,発現する物性や機能性は集合状態における分子の配列および配向に大きく影響される。分子性伝導体においても,分子レベルでドナーやアクセプターを設計し,集合状態の分子配列および配向を制御することを可能にしていくことが,その開発において重要なポイントとなる。本研究ではその様な観点から,分子認識能を有するカリックス[4]アレンに注目し,カリックスアレンの包摂機能を保持しつつ,アクセプター性を導入した新しいタイプの分子性伝導体の開発を目的として行った。具体的な分子設計として,カリックス[4]アレンのフェノール部分をアクセプター分子であるDCNQI(N,N'-ジシアノキノンジイミン)構造へ変換した分子をターゲット分子として,その合成について検討を行った。 2.カリックス[4]アレンのキノン体であるカリックス[4]キノンは既報の方法にしたがい,カリックス[4]アレンを硝酸タリウムと反応させることにより合成した。得られたカリックス[4]キノンを,従来のDCNQI誘導体の合成法を適用し,塩化チタン存在下,ビス(トリメチルシリル)カルボジイミドと様々な条件下で反応させてみたが,目的とする分子は得られなかった。これはカリックス[4]アレンの分子骨格が強固に保持されているため,従来のDCNQI誘導体の合成と異なり,反応点であるケトン部分が立体的に込み合っているためではないかと考えられる。このように従来のDCNQI誘導体の合成法を適用するだけでは目的とする分子は合成できないことが明らかとなった。現在,分子認識性を持つドナー分子として,DCNQI誘導体が金属イオンと特異的に配位する最少単位であるシアノ基が長鎖アルキルを介してTTF誘導体に結合した分子の合成を検討しているところである。
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