研究概要 |
三次元の磁気構造を持つ高温分子磁石を新手法を用いて構築することを目的とし検討を行った。まず配位子として三次元の錯体ポリマーが得られると考えられる直線型トリニトロキシドラジカルであるビス[3-t-ブチル-5-(N-オキシ-t-ブチルアミノ)フェニル]ニトロキシドを用い、遷移金属錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナートマンガンを用いて錯体形成を行ったところ、予想通りに46Kの転移温度を持つ強磁性錯体が得られた。この錯体は良好な単結晶が得られ、X線結晶構造解析を行ったところ、まず直線型トリニトロキシドの両端のニトロキシドとマンガンイオンが一次元鎖を形成し、その一次元鎖は約60°の角度をなして交互に積み重なっている。さらに中央のニトロキシドで一次元鎖間を結びつけ結果的に三次元磁気構造を持っていることが判った。この手法を用いた二次元分子磁石の転移温度が最高でも10Kであることを考えると大きな進展だと考えられる。また構造が明らかな分子磁石の転移温度の最高記録が22.5K(仏,O. Kahnら,1993年)であるのでこの記録も大きく更新したことになる。一次元、二次元分子磁石の構築例とあわせてこの手法が高次元の分子磁石の構築に非常に有効であることが判った。
|