研究概要 |
液液および固液界面膜の構造や配向変化がどのような協同作用によって起こるかを解明することは,分子素子などを実現させるための基礎研究として重要である。そこで,各官能基ごとの情報が得られる赤外分光法を用いて検討することとした。 まず,四塩化炭素/水界面における重水素化ステアリン酸(ST)とヒドロキシアゾベンゼン(HAZO)の混合吸着膜に光を照射し,HAZOのトランス-シス異性化にともなう重水素化ST分子の構造や配向変化を検討するために赤外吸収スペクトルの測定を行なったところ,検知器の感度が不足しているために測定できなかった。そこで,光異性化LB膜と液晶薄膜系における分子構造と配向制御について検討することとした。すなわち,アゾベンゼン基を含む長鎖脂肪酸とカチオンポリマーとのポリイオンコンプレックス(Azo)LB膜上に液晶(12CB)と重水化ステアリン酸(DSt)の混合LB膜を構築し,光照射にともなうLB膜中の分子配向変化をフーリエ変換赤外透過および反射吸収スペクトルから調べた。その結果,紫外光および可視光の照射によって,Azoは可逆的にトランス-シスの光異性化することがわかった。一方,Azoの光異性化にともなう混合LB膜の配向は,25℃ではほとんど変化しないが,45℃では12CBおよびDSt分子ともに変化することが明らかとなった。この相違は,混合LB膜の状態が固体か液晶かの違いによることがわかった。
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