研究概要 |
申請者らが開発したフロースルー型可塑化PVC膜高分子アニオンセンサーを用いて,感応物質としての両親媒性カチオンの効果といくつかの高分子アニオンや無機アニオンに対する電位応答特性を検討した.数種の両親媒性カチオンを検討した結果,感応物質としての溶媒抽出されやすさと分子構造の差異によりポリスチレンスルホン酸(PSS)に対する応答特性に特徴があることがわかった.溶媒抽出されやすい両親媒性カチオンは,PSSに対してより大きな電位変化を示した.また,アルキル直鎖の両親媒性カチオンを用いたセンサー(ACセンサー)は,比較的短い時間で一定の観測電位に達した.ACセンサーは,PSSの低濃度に対して比較的大きな電位差変化を示したが,高濃度での電位勾配は小さかった.一方,平面型や球形型の両親媒性カチオンを用いたセンサー(PSセンサー)は,ACセンサーよりも一定の観測電位に達するのが遅かったが,PSSの高濃度に対しても一定の大きな電位勾配を示した. これらのセンサーは,どの分子型の両親媒性カチオンを用いても親水性の強いポリビニル硫酸やヘパリン硫酸に対してはPSSほど大きな電位変化を示さないことがわかった.ポリビニル硫酸に対しては,PSセンサーよりACセンサーの方が大きな電位勾配を示した.また,これらのセンサーは,過塩素酸イオン,チオシアン酸イオン,ヨウ化物イオン,硝酸イオン,ドデシル硫酸イオン,ドデシルベンゼンスルホン酸イオンに対して,高濃度でいずれもネルンスト応答を示したが,溶媒抽出のされやすいアニオンに対しては,高濃度でスーパーネルンスト応答になることがわかった.多様な電位応答特性は,両親媒性カチオンの膜外への分配により膜界面で生成されるイオン会合体や高分子電解質集合体が膜電位を左右するためであると考えられた.
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