研究概要 |
研究代表者は、出芽酵母を使った遺伝学的研究から、Ca^<2+>受容タンパク質であるカルモデュリンと、低分子量GTPaseであるRho1タンパク質の二つの系で、「遺伝子内で相補する多数の変異を解析すること」により、細胞増殖に必須な多機能タンパク質の機能の、一つ一つを分離分別して解き明かすことに成功した。本研究では、多機能タンパク質の変異間で見られる遺伝子内相補の持つ意味を分子レベルで解明することを目的として以下の実験結果を得た。まず、カルモデュリンは、(i)アクチン繊維の局在制御、(ii)出芽、(iii)微小管集合中心の機能発現、(iv)カルモデュリン自体の芽における局在、という少なくとも4つの機能を持つが、分子レベルでは、アクチン繊維の局在調節がV 型ミオシンの結合を介していることを突き止めた。さらにカルモデュリンの変異と遺伝学的に相互作用する未知のタンパク質の変異を同定するために5つの合成致死変異を詳しく解析し、そのうちの二つの遺伝子の構造を明らかにした。一方、ヒトrhoAのホモログである酵母のRho1には、(i) NPKCのホモログであるPkclと、(ii) 1,3-β-glucan synthaseという2つの必須ターゲットが存在し、細胞壁の合成と調節に関与していることをはじめて明らかにした。特に、1,3-β-glucan synthaseの調節では、当該酵素の調節サブユニットとして極めて重要な調節を行っていることを明らかにした。このようなカルモデュリンやRho1タンパク質などの多機能タンパク質は、複数の必須経路を調節することにより、細胞内ネットワーク制御の中心的役割を果している。
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