都市公園に生息するキジバトの食物内容と採食場所に関する情報を収集するために、死亡個体の胃内容分析、キジバトの行動の直接観察、捕獲個体の標識を行なった。 拾得した9個体の胃には、クスノキ・ケヤキ・ナンキンハゼ・トウネズミモチ・フウなどの樹木の種子、およびカモジグサ・カラスノエンドウ・ツユクサ・アメリカフウロ・ブタクサ・ハコベなど草本の種子がおもに含まれていた。4-8月に拾得された4個体からはおもに草本の種子、11-1月に拾得された4個体からはおもに樹木の種子、2月に拾得された1個体からは樹木と草本の種子が混じったものがそれぞれ得られた。特筆すべきは、11-2月のすべての個体においてクスノキの種子が多く含まれていたことで、クスノキの種子が冬期のキジバトの重要な食物であることが示唆される。またクスノキやトウネズミモチは液果であるが、果肉はまったくついておらず、種子だけを選択的に採食したことがうかがえる。 直接観察から、地上における草本の種子・花・つぼみや落下した樹木の果実の採食や、樹上における樹木の果実の採食が確認された。しかし地上における採食の観察の多くにおいては、何を食べているのかを確認することができなかった。樹上で果実採食していた樹種としては、サクラ(5-6月)、エノキ(8月)、ムクノキ(9-12月)、ナンキンハゼ(10-1月)、ケヤキ(12月)があげられる。クスノキは胃内容に多く含まれていたが、樹上で果実を食べる行動はまったく観察されなかった。 個体の追跡観察の試みのために、これまでに54羽のキジバトを捕獲して個体識別を行なった。しかし調査地に定着して充分な採食行動を観察できた個体はなく、個体の採食行動を追跡するという試みは失敗に終わった。その理由として、捕獲した個体が、若齢個体で他の地域へ分散した可能性や調査地外から飛来した個体であった可能性が考えられる。
|