本研究では、ABAによる遺伝子発現の制御機構を明らかにするため、ABAにより誘導される遺伝子の発現を指標とした選抜法を用いて、ABA応答性に関わる突然変異体を分離し、原因遺伝子をクローン化したいと考えている。本年度は、以下に述べるような研究を行った。 ABAの誘導を受けるCOR15a遺伝子のプロモーターとルシフェラーゼとのキメラレポーター遺伝子を持つ形質転換アラビドプシスにおいて、CCDカメラにより蛍光を検出したところ、ABAによりルシフェラーゼ発現が誘導されることが確認された。ABAを添加しない場合には蛍光は検出されなかった。また、in vitroのアッセイから100μMABA、3時間の処理でルシフェラーゼ活性は数百倍の誘導を受けること、ABA非存在下での非誘導的発現は非常に低いことがわかった。以上の結果からこの形質転換体は突然変異体の選抜に適していると考えられたので、約5000粒の種子のEMS処理を行い、得られたM2幼植物体を用いて、ルシフェラーゼ発現に異常がみられる突然変異体の選抜を行った。現在のところ、突然変異体は得られていないが、今後さらに多くの選抜を行って、目的の突然変異体を得る予定である。 また、ルシフェラーゼと共にcodAとCOR15aとのキメラ遺伝子を持つ形質転換体も作成した。この形質転換体においてもABAによりルシフェラーゼ遺伝子の発現が誘導されることを確認した。一方、codA遺伝子がコードするシトシンデアミナーゼは5-フルオロウラシルを生成することにより植物体を致死にするはずである。しかし現在のところABA処理により形質転換体を特異的に枯死させることには成功していない。今後処理条件を検討することによりこの形質転換体でも突然変異体の選抜を行いたいと考えている。
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