研究概要 |
カリウムは植物の3大栄養の一つであり、また高濃度NaClが存在する塩ストレス条件下ではナトリウムイオンと拮抗するカリウムイオン吸収能力が耐塩性機構に深く関与すると考えられている。そこでカリウム輸送系の細胞生理学および分子生物学的研究を、Mesembryanthemun crystallinumおよびオオムギを研究材料としておこなった。前者については、カリウムチャンネル遺伝子断片がPCR法によって同定されていたので、その成果に基づき今年度は遺伝子の全長と遺伝子発現について調べた。その結果この遺伝子のcDNAは2,800bpの長さであることがわかった。またこの遺伝子は主として根で発現していた。PCR法によると、葉では根のものと異なった長さのDNAが増幅されてきたので、根とは異なる種類のカリウムチャンネルが発現しているものと考えられる。塩ストレスによる影響については、この遺伝子の発現は塩ストレスによりやや減少することが明らかになった。発現部位と塩ストレスの影響についてさらに詳細に検討するため、in situ PCR法の導入を現在検討している。つぎにオオムギのカリウム輸送系遺伝子については、Mesembryanthemun crystallinumと同じ条件では、目的とする遺伝子はPCRによって増幅できなかった。そこでPCRの条件を検討した結果、いくつかのPCR産物を得ることができた。これらが目的とするものかどうか、現在クローニングと塩基配列決定の準備を進めている。
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