ケツルアズキ発芽種子の子葉で高い発現を示すα-アミラーゼとシステインプロテアーゼSH-EPの両遺伝子の発現制御機構を解明するために以下のような研究を進めた。 1.両遺伝子のプロモーター領域をβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子に結合した融合遺伝子を作製した。これらの融合遺伝子を発芽時の各段階のケツルアズキ種子の子葉に粒子銃によって導入した。その結果、吸水後1日目の子葉で最も高い活性がみられた。SH-EP遺伝子の5´-上流域を削っていき、それらを結合したGUS融合遺伝子の発現量を調べた。その結果、-164までの長さのものでも比較的高い活性がみられた。 2.他の植物遺伝子のプロモーター領域のACGTというモチーフを含む配列に結合するタンパク質が存在することが既に知られている。このACGTを含む配列はアミラーゼ遺伝子のプロモーター領域には2カ所あり、その共通配列はTACGTCAであった。一方、SH-EP遺伝子にもそれとよく似たTACGTCCという配列がみられた。これらの配列に結合するタンパク質を発芽種子の子葉より調製した粗核抽出液を用いて調べた。その結果、アミラーゼ遺伝子の配列への結合活性は0日目と2日目の子葉中に存在した。一方、SH-EP遺伝子の配列への活性は0日目にはみられたが、2日目ではみられなかった。 3.SH-EP遺伝子のプロモーター領域の欠削変異体を用いた結果や、ACGT配列結合タンパク質の存在様式よりこのタンパク質はその遺伝子発現の活性化には機能していないことが推定された。しかしながら、アミラーゼ遺伝子ACGT配列の結合タンパク質はSH-EP遺伝子のものと存在様式が違うので、両遺伝子のACGT配列には異なるタンパク質が結合していることが推定された。
|