メダカ亜目魚類14種からDNAを抽出し、PCR法によりミトコンドリアにコードされるチトクロームbおよび12SリボソームRNA遺伝子を増幅、単離し、塩基配列を決定した。それらの塩基配列をもとにメダカ亜目に属する魚類の系統関係を推定した。その結果、ゼノポエシルス属の魚類は、スラベシ島のメダカ属魚類を含む単系統群を形成することが明らかとなった。またゼノポエシルス属の1種(X.saracinorum)の核型を分析した結果、大型の両腕型染色体を持つことが分かった。これは核型からみても、X.saracinorumがスラベシ島のメダカ属魚類に近縁であることを示している。これらの結果は、ゼノポエシルス属の魚類がスラベシ島のメダカ属魚類とともに単系統群を形成するのはミトコンドリアの移入交雑によるのではないことを示唆している。つまり別属とされるほどの形態的な変化はニッチの変化による形態進化の加速によるものではないかと推定されるわけである。これらのことをさらに明らかにするためには、核にコードされている遺伝子配列に基づく系統解析をおこなう必要がある。現在、光回復酵素遺伝子の一部を、材料とする総ての魚種からPCR法により単離する事ができた。一部分については塩基配列も決定した。その結果エクソン部分にはほとんど変異がないが、イントロン部分には挿入や欠失あるいは塩基置換などの多数の変化があることが明らかとなった。また日本メダカの種内にも挿入/欠失型の変異があることが分かった。これを用いて、光回復酵素遺伝子の連鎖解析をおこない、連鎖する他の遺伝子座も明らかとなった。今後は単離したフラグメントの全塩基配列を決定し、それに基づく分子系統学的解析をさらに詳細におこなう予定である。
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