研究概要 |
真核の単細胞生物であるゾウリムシ(P.caudatum)は、その種の中に性的に隔離された遺伝的種(syngen)が存在し、各syngenは一組の相補的な接合型(Even-,Odd-type)で構成される。 本研究の目的は、標準株がなくともsyngenを同定できる方法(記載できる同定法)を確立する事であり、当該年度は、syngen3のE-mating type(VI)の接合型物質をコードする遺伝子を単離する為に以下のような研究を行った。 I.syngen3のE-typeの強い接合活性を発現している細胞より単離したmRNAとO-typeのlog-とearlystationary-phaseの細胞から単離したmRNAを用いて、Hybrid-subtraction法を行った。そして、7種類のsubtractされたcDNAを得た。 II.これらのcDNAをprobeとしてNothern-blotを行い、syngen3の様々なstrainで接合型特異性、或いはculture age特異性を調べた。その結果、今回得られたcDNAは主にlog-phaseでの発現量が多く、接合型特異性よりもstrain特異性の方が高かった。 III.今回得られたcDNAの塩基配列を決定し、blastを用いてGenBankのdatabaseと相同性検索を行った。その結果、7種の内3つが、既知のADP-ribosyl transferase,hsp10 homologue,ADHと高い相同性を示し、これまで原生動物で単離されていないDNAであった。 本年度に行ったHybrid-subtraction法では、接合型特異的或いは、接合型物質をコードする遺伝子を単離する事ができなかった。しかし、次年度にmRNA differential display法を用いて同様の研究を行う予定である。
|