・新生児から5才くらいまでの未成人現代人骨標本のうち、年齢、性別の記録のある個体、下顎骨と四肢骨に大きな破損のない個体、そして顕著な病変などのない個体を選び出して歯の発達段階のデータと四肢骨の計測データを基礎データとして収集した。 ・歯の形成パターンは下顎骨のX-ray写真から個々の歯の石灰化の程度を読みとった。同時により簡便な方法として用いられている歯の萌出程度も記録した。四肢骨の成長程度は、骨端を除いた骨幹部分の長さと骨体中央部の周径を計測し、データとした。 ・データの解析、相関等。まず、現代日本人幼児骨から得た基礎データから記録上の実際の死亡年齢と歯の萌出段階、形成段階との関係を調べたが、かなりのずれ(変異)が認められた。古人骨の年齢推定には歯の萌出段階や形成段階のデータが用いられることが多いが、今までいくらかの指摘があるのと同様に、かなりのvariationがあることを示している。 ・つぎに、上肢骨、下肢骨の長さデータと歯の萌出、形成段階データとの相関程度をみた。四肢骨の長さデータは歯の萌出段階といちばん良く相関し、実際の死亡年齢と四肢骨長さの関係よりは有意であった。また、歯の形成段階データよりも萌出段階のデータの方がより高い相関値を示したが、これは有意ではなく、歯の形成段階のデータ数がかなり少ないことが影響しているかも知れない。このデータでは上肢骨より下肢骨の方がより歯の成長段階データに良く相関を示した。 ・現時点で、全体のデータ数と歯のX-rayのデータを増やすことができたので、上記の関係をもう一度確かめる必要があると考えている。また、先史時代幼児骨データ、ネアンデルタール人幼児骨のデータなども得られたので、合わせて解析を試みる予定である。
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