本研究ではポリイミド・ラビング膜上の液晶の配向メカニズムを分子レベルで解明するため、分子配向がわかっているポリイミド・ラビング膜上の単分子液晶層の分子配向を測定した。まず、単分子液晶層からの光第二次高調波を観測するために既存の1064nm励起の光第二次高調波発生(SHG)システムと本予算で購入した紫外光用小型分光器を組み合わせて532nm励起の光SHGシステムを構築した。次に、ポリイミド(PMDA-ODA)・ラビング膜の表面近傍15nmの平均的な分子配向を光学リタデーションの入射角依存性から決定した[研究発表参照]。次に、そのポリイミド膜上に液晶を単分子層吸着し、SH光の偏光・方位角依存性を測定することによって単分子液晶層の分子配向を決定した。 ポリイミド・ラビング膜表面近傍と単分子液晶層の分子配向を比較するため、それぞれの分子のオーダー・パラメーター・テンソルと平均傾斜角を計算した。その結果、定性的にはポリイミド分子及び液晶分子はともにラビング方向に沿って、しかも基板から傾いて配向しており、両者の分子配向は一致している。しかし、定量的に比較してみると平均傾斜角はポリイミド分子の方が大きく、また液晶分子の方がよりラビング方向に配向していることが分かった。 しかしながら、この結果からすぐにポリイミド膜表面の分子配向と単分子液晶層の分子配向が定量的には一致しないと結論することはできない。なぜなら、決定されたポリイミド膜の分子配向は表面近傍15nmの領域の平均値であり、ポリイミド膜最表面の分子配向ではないからである。現在、ポリイミド膜最表面の分子配向を測定する方法を確立しているところである。
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