研究概要 |
本研究で対象としたIII-V族希薄磁性半導体(In,Mn)Asは高濃度のド-ピングが可能であり、キャリアと磁性スピンの相互作用に基づく新しい半導体物性の分野を展開しつつある。 本研究は将来のエレクトロニクス材料として有望であるIII-V族希薄磁性半導体(In,Mn)Asの ・分子線エピタキシ(MBE)を用いた結晶成長法の確立、 ・互いに密接に関連する電気的特性と磁気的特性を通しての物性とその成長条件依存の明確化を目的とした。 (In,Mn)Asの結晶成長は現有のMBE装置を用いて半絶縁性GaAs基板上(Al,Ga)Sbバッファの上に行った。Mnの表面偏析を避けるため(In,Mn)Asは低温で結晶成長した。成長中の反射高エネルギー電子回折(RHEED)像の観測をもとに成長条件の最適化を行い、基板温度250℃でのAs分子線強度の制御により2次元的に成長する(In,Mn)Asの結晶成長法を確立した。この成長条件下から外れた場合、3次元的な核を伴う成長過程を経ることがRHEED像で観測された。 (In,Mn)Asの低温でのホール効果は異常ホール効果と呼ばれる磁化に比例した成分が主である。そのため(In,Mn)As結晶の磁気的性質の評価は現有の超伝導磁石(最高磁場7T)を有する極低温クライオスタットでのホール効果の測定を通して行った。最適成長条件下で成長された結晶の低温でのホール抵抗vs.磁場(R_<Hall> vs.B)曲線はスクエアなヒステリシスを持つ強磁性秩序を示し、成長時に3次元的な核を伴った結晶ではそのヒステリシスの形が鈍り、強磁性的なクラスターの集合体である超常磁性体の性質を示すことが分かった。 以上の様に本年度の目的は達成されたが、今後磁気的性質が顕著に現れる試料構造の検討を進めデバイス材料としての評価を進めて行く必要がある。
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