核融合炉超伝導マグネットには、構造材料としてオーステナイト系ステンレス鋼等が使用され、また、電気的熱的絶縁材料としてガラス-エポキシ系有機複合材料が利用されている。本研究は、極低温用構造材料の破壊力学的挙動及び極低温破壊に伴う発熱・温度上昇の発生機構を解明することを目的に、数理解析及び有限要素法による数値シミュレーションを併用して理論的検討を行ったもので、研究内容を要約すると以下の通りである。 1.オーステナイト系ステンレス鋼JJ1鍛造材(板厚250mm)の極低温破壊靱性試験及びき裂進展に伴う発熱・温度上昇計測に関する有限要素解析を行った。JJ1鍛造材は、核融合炉超伝導マグネット用構造材料として開発されたJCS(Japanese Cryogenic Steels)の一つである。極低温破壊力学の弾塑性解析は、Dugdaleモデル及びひずみ増分理論に従って実施した。また、J積分及びき裂進展に伴う擾乱エネルギーを求め、擾乱エネルギーを発熱源とする非定常温度場を解析した。さらに、解析結果と実験結果を比較し、詳細な検討を加えた。 2.き裂群を有するガラス-エポキシ系有機複合材料の極低温弾性問題を物性値温度依存性の影響を考慮して理論解析し、応力拡大係数に及ぼす材料温度、き裂密度及び織物構造の影響を詳細に検討した。 3.ガラス-エポキシ系有機複合材料及びエポキシ樹脂はり材の極低温破壊力学解析を行い、破壊に伴う擾乱エネルギーを動的ひずみエネルギー解放率を用いて評価した。また、解析結果と実験結果を比較し、擾乱エネルギーから擾乱熱エネルギーへの変換率を求めた。
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