近年、宇宙空間などの過酷な環境下で使用される機械や構造物の需要が高まり、傾斜機能材料のような不均質材料や金属基複合材料のような異方性材料に関する研究が盛んに行われている。本研究では、波頭に沿った数値積分法であるために、二次元および三次元波動伝ぱの状況を詳細かつ高精度で解析できる従特性曲線法を拡張して、異方性積層板にみられるような繊維配向角(繊維強化方向)が板の境界(加工切断面)に対し平行にも直角にもならずに任意の方向をもつ傾斜不整合境界を有する複合材料の二次元熱衝撃問題の解析手法を提案するとともに、そのような材料の熱衝撃下での複雑な動的特性も明らかにし、異方性積層板を用いた機械設計のための基礎的知見を得ようとするものである。全く新しい研究のため、以下のように段階を踏んで徐々に複雑な問題に発展させることにした。 1.第1段階として、繊維配向角が境界に平行または直角である横等方性体の二次元熱衝撃問題の基礎式の導出を行い、実際に数値計算も行って解析法の基本的な取り扱いについて検討した。その結果、熱衝撃を受ける横等方性円柱中の二次元波動伝ぱの状況を従特性曲線法をもとにして提案した解法により詳細に解析でき、提案した手法が有用であることが確認できた。この研究成果は日本機械学会講演会で発表し、外国学術雑誌に投稿した。また、本研究の三次元解析の基本となる三次元等方性体中の波動伝ぱ解析の研究成果が日本機械学会英文誌に掲載された。 2.第2段階として予定していた傾斜不整合境界を有する異方性体に対する二次元熱衝撃問題は基礎式の定式化が予想以上に難しかったことから研究実施期間(1年間)が不足し、研究成果をあげられなかった。研究期間と研究の進め方の検討が十分ではなかったことが反省点である。今後、この傾斜不整合境界を有する異方性体の二次元熱衝撃問題の解析手法の確立を目指し、研究を進める予定である。
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